食事中のむせ込み、夜間咳嗽、突然の発熱に対し滋陰降火湯が有用であった2症例 | ||
症例1:86歳、女性。 主訴:食事中のむせ込み、夜間咳嗽 既往歴:糖尿病(発症年不詳、加療中) 高血圧症(発症年不詳、加療中) 高脂血症(発症年不詳、加療中) 脳梗塞・左片麻痺・てんかん(2002年1月発症) 現病歴:2004年4月、当院の近くに転居してきた。通院不能のため、訪問診療を依頼された。月2回定期的に訪問し、グリメピリド1mg 2T、オルメサルタン メドキソミル10mg 1T、プラバスタチンナトリウム10mg 1T、シロスタゾール100mg 2T、フェニトイン散10% 3g、ブロチゾラム0.25mg 1Tなどの薬剤により、血圧128/58 mmHg、FPG 110 mg/dl、HbA1c 5.8%、LDL-ch 84mg/dl、HDL-ch 47mg/dl、TG 85mg/dl(2006年3月17日)位にコントロールしていた。 06年5月27日、訪問診療時に家人から「食事中にむせ込むことが多く、食事を与えにくい」との訴えがあり、滋陰降火湯(TJ-93)7.5gを分3で処 方した。次回訪問した6月10日にはむせ込みはほぼ消失したが、漢方薬は飲みにくく服用を嫌うとのことだった。やむなく、症状の程度に応じて服薬量を調節 してよいこととした。その後、比較的安定した経過をたどっていたが、08年9月22日、トイレで転倒して左大腿骨を中程で骨折、近医へ入院して手術とな り、入院期間中、滋陰降火湯はまったく中止となった。10月14日の退院後、訪問診療を再開。12月15日、お茶を飲むときにときどきむせて吐くとの訴え があり、症状に合わせ適宜服用することとして滋陰降火湯を再投与した。09年1月5日には、嘔吐はなくなり、むせ込みも減ったとのことであった。5月11 日、手術した患側の浮腫が持続し、血圧も上昇してきたため、滋陰降火湯中に含まれる甘草の影響も考え同薬を一時中止した。5月25日、血圧は安定してきた ものの、夜間咳嗽が増加し、食事中もむせ込むようになった。6月1日利尿薬使用下に滋陰降火湯を再開したところ、7月13日の訪問時には食事中のむせ込 み、夜間咳嗽ともに消失していた。その後、現在(2010年2月)まで安定した経過をたどっている(図1)。 |
||
考察 |