睡眠時無呼吸症

概要
睡眠時無呼吸症はそのほとんどがのどの奥での気道閉塞/狭窄による閉塞型睡眠時無呼吸症(OSA)と呼ばれるタイプです。太った中年以降の男性に多いと言われますが、下顎の作りによってはやせた若年女性でも少なくなく、日本では3割以上が非肥満者と言われます。

症状・合併症
いびき・夜間の中途覚醒や日中の眠気が自覚症状ですが、あまりはっきり自覚していない方も多いです。睡眠中に息が詰まってしまっているために「苦しい」という反応が生じます。その結果、一つは無意識下に軽く目が覚める反応が起こり、眠りが浅くなります。このため十分な時間眠っていても日中に眠気が生じ、集中力の低下や居眠りが生じたり、交通事故の原因になることもあります。また、苦しくなることで血圧上昇などが起こり、心臓・血管系に大きな負担をかけます。最終的には高血圧(特に朝方)、不整脈、脳梗塞、心臓突然死などのリスクが上昇します。このため、最重症のOSAは無治療で放置すると10年後の死亡率が3割以上になるとの報告もあります。
その他には、夜間多尿、うつ状態、男性機能障害、糖尿病などの原因になるといわれています。

診断
 腕時計型の装置に指キャップがついたような装置を自宅に持って帰って一晩装着してまた持参していただく簡易検査、自宅に脳波を含む測定器械を送って自分で装着して一晩計測してもらう在宅での終夜ポリグラフ検査(PSG)、専用の病室に一晩入院して技師/医師が監視しながら動画を含めた各種パラメータを測定する入院PSGがあります。入院PSGが最も信頼できる検査であることは間違いありませんが、最近は簡易検査、在宅PSGの精度も相当上昇してきています。ただ、睡眠時無呼吸以外の睡眠障害の診断には入院PSGが必要不可欠で、無呼吸だけでは説明できない症状がある場合には入院精査をおすすめしています。

治療
睡眠時間1時間あたりの無呼吸/低呼吸の回数(AHI)が重症度の指標となり、診断基準で(5未満が正常)、また治療方法の選択の目安となります。
ある程度以上重症の方(簡易検査でAHI>40、終夜ポリグラフ検査でAHI>20) では、CPAP(持続気道陽圧療法)という、鼻に密着したマスクからのどの奥に空気圧をかけて、その力で閉塞・狭窄している部分をちゃんと通るように広げる治療が行われます。利点としては圧設定をしっかりすれば、のどの奥の形態によらずほぼすべての患者さんで無呼吸を正常レベルまで減らせることです。欠点としては外して眠った日は効果がないことで、根治療法というよりは眼鏡のようなものと考えていただくといいと思います。また、鼻から空気圧がかかる違和感がつらいという方もままいらっしゃいます(当初の印象よりも慣れるものですが)。以前はCPAPの圧調整のアルゴリズムは未成熟で、相当違和感が強かったものですが最近の機械は圧を自動で調節する機能がかなり進化しています。加温・加湿機能の進化やマスクの形態・素材の進化も相まってかなり快適に治療を受けられるようになっています。
CPAPが適応にならないAHI<20の方やCPAPに耐えられない方はマウスピース(下顎を少し前に出すようなかみ合わせを作り、空気の通るスペースを広げる装置)の適応になります。歯科に依頼して精密に型どりして作成していただきます。
扁桃腺が非常に大きい方や、その他のどの形態異常がある方などは手術療法も視野に入りますが、手術に際しては経験豊富な耳鼻科医の意見を聞くことが重要です。

費用
 CPAPは保険適応になり、受診料に機器のレンタル料が含まれます(受診していただかないとCPAP業者へのレンタル料金は医療機関からの持ち出しになってしまい、そのため定期受診できない方はCPAPを中止・返却していただくことになってしまいます)。3割負担の場合、月5000円弱になります。
 マウスピースも保険適応になりますが、種類や作成までの処置(歯がぐらついている人では先に治療が必要です)によっても異なりますので、詳細は歯科にお問い合わせください。